2009年 10月 28日
月の無い夜、虫の多さに蚊帳から起き出した。 テレビもないし、携帯も通じない。(当時は) おじぃとおばぁも寝てしまって話し相手もいない。 半分眠った頭で、三脚にカメラを取り付ける。 木戸をそっと開けて、珊瑚の敷き詰められた庭を忍び足。 しまった!ライトを忘れた。。。 後ろを振り返ると、戻るのも面倒だ。 途端にどこかで心細い気持ちが生まれた。 浜へ抜ける木々のアーチをそろそろと進む。 とろんとした闇が私の周りに存在し、闇を掻き分けている。 ここならいいだろうと思った場所に着いたものの、 暗すぎて構図が決められない。 愚かにも夜空が明るいと無意識に思っていたのだ。 辺りに光といえば星と、対岸の街の瞬きだけ。 ・・・露出計もレリーズも忘れてきた。 ここまで来て何もしないのも癪なので、勘で撮った。 10分くらい露光する間、何かが私の足をかすめる。 まったく撮れた気がしない。 私は真の闇を知らなかった。 闇の粒子に包まれていることを知ったとき、恐怖が纏わりついて来る。 蛾のように街灯を求め、次第に早足になる。 ![]() 光は闇への畏れなのだ。 ■
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by jazz_houser
| 2009-10-28 01:15
| 新城島
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2009年 07月 07日
旅は異界へと向かうことだろう。 異界とは単純に見知らぬ土地ということだけではなく、 自分の生活圏以外の場所も含まれる。 そこに住み始めて日常となるなら、異界ではなくなるのかもしれない。 琉球の昔、外洋が異界であり、 異界とは信仰上、後生(彼の世)である。 簡単には手が届かない、人知の及ばない領域。 人の魂(マブイ)は海の遥か彼方にあるとされるニライカナイ、後生へ行くとされた。 でもなぜそこから此の世に帰ってくるとされたのだろうか。 昔話で村の外れの井戸が後生の入り口、とどこかで読んだ。 電気煌々とついた真の闇のない都会では、後生なんて発想は生まれない。 十六日祭では、彼の世の正月を墓で祝う。 彼の世はすぐ手の届きそうなところにあったりするのだ。 此の世と彼の世は反対のようで、なぜか近しい。 意外と既視感があったりすることを思うと、 私のマブイはどこかで見ていたのかもしれない。 ![]() Rolleiflex 3.5F Xenotar 私は此岸と彼岸を行ったり来たりする 肉体は生きたままで ■
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by jazz_houser
| 2009-07-07 00:30
| 新城島
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2009年 06月 05日
蝶の舞う門を通り、海に出た。 寄せる波が泡になり、砂に沁み込む。 今は穏やかな海。 遠くに波間に揺れるものがある。 ![]() Wide Angle Rolleiflex 消えては生まれ、生まれては消える命。 周りの想いとは遠いところで、その廻りは続く。 その廻りを回すのは何なのだろう。 分からない。 この生は何のためにあるか、何をやるべきか、 などと考えるのはすべての生き物の中で人間だけだ。 思惟も廻り、、、 砂の上に座る。 ■
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by jazz_houser
| 2009-06-05 12:09
| 新城島
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2009年 06月 04日
島を抜ける道をまだ進む。 下半身に種子がすがりついてくる。 そのうち海に出るだろう。 人の生活圏である集落、此岸から海へ。 海は彼岸と接する。 生活を支える珊瑚礁、イーノー(海畑)が島を囲む。 やがて7-8mドロップオフして、深い青が沖に広がる。 人知を超えた外洋、彼岸へ。 そういえば朝おじぃに挨拶してから、声を発していないことに気づく。 そんなことを考えながら、蝶が次々に合流する。 ここは楽土の入口か ![]() Wide Angle Rolleiflex&PE-28S 此岸と彼岸の接する場所 ゆるやかに蝶は誘う ■
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by jazz_houser
| 2009-06-04 19:23
| 新城島
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2009年 06月 03日
島を抜ける道。 蜘蛛の巣を顔に受けながら蝶と歩く。 鞄を下ろして、水を飲む。 喉を水が通る音。 それが消えると、森の音しかしない。 どれも生き物の出す音だ。 しゃがんでみる。 と、いつからか無音になった。 濃い緑の間から、光が降り注ぐ。 それでできる影。 無数の生き物に包まれて、死の香りを嗅ぐ。 ![]() Wide Angle Rolleiflex また厚みのある生き物たちの音が、耳に戻ってきた。 ■
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by jazz_houser
| 2009-06-03 23:56
| 新城島
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2009年 05月 30日
夜半の雨が止んで、しん、とした集落。 草を踏む足が露で濡れる。 いつもの静まり返った空気がより一層沈降する。 はっきりと終わりを感じながら、自分からは触れない。 一人じっと中へ中へ。 ![]() Rolleiflex 3.5F Planar 羽音が私を呼び戻す。 新城の空気を肺にゆっくり満たしたなら、 肺胞から芽が出て、 身体を養分にガジマルが繁る。 そんな気がした。 ■
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by jazz_houser
| 2009-05-30 10:31
| 新城島
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2009年 05月 15日
誰もいない、誰も来ない浜をゆく。 影が長くなった。日がだいぶ傾いてきた。 すぐ向こうに下地島が見える。 新城島の上地―下地間は、干潮時には歩いて渡ることも可能だが、 帰りには潮が満ちてくるだろうからお勧めできない。 潮の満ちるスピードは想像するよりも早いから。 砂浜に座って下地のサイロを眺める。 辺りには、世界中から届いた贈り物が散らばる。 ペットボトル、洗濯ばさみ、注射器、、、 書いてある文字は中国語・ハングル・英語、もちろん日本語もある。 でも砂浜はとても綺麗で、さわさわ手のひらで白砂を撫でてみる。 誰もいない、来ない浜は拾う人もいないんだもの。 ふっと立ってバッグを担いだ。 視線の先のサンゴの間、もう一つ贈り物を見つけた。 ![]() Wide Angle Rolleiflex 波で運ばれた自然からの贈り物。 台湾から?それともはるかインドネシアからか。 長旅の末、やっと芽を出した。 すっと心に浮かんだ。 今新しい命が生まれた その瞬間に死が約束された きっともうすぐ訪れる 誰も来ない砂浜で ■
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by jazz_houser
| 2009-05-15 18:49
| 新城島
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2009年 03月 31日
八重山諸島、独特の植物が繁茂する。 海岸を歩き、昔の珊瑚が固まって削られた岩礁を見渡すと、 そこここに緑の斑点の集まりが見られる。 ミズガンピだ。 多肉のような少し厚ぼったい小さな葉を持つ。 夏には小さくかわいい白い花を咲かせ、その後に実が残る。 実はやがてはじけ、周囲の岩礁にじわりじわりと子孫を食い込ませてゆく。 思い出せば与那国島、鳩間島、新城島、波照間島で見たことがあるから、 八重山全域に分布しているのだろう。 ハマシタンという別名は、浜に生え、紫檀のように硬質な木質を持つからだと思う。 ミズガンピは宮古島では、漁師の木と言われ、この木があると火事にならないらしい。 そのためか、樹姿が蛇のようにくねって趣があるからか分からないが、 沖縄では庭木・特に盆栽として人気がある。 野生では土も全く無い岩盤に、塩水しかない過酷な環境で、じっくりじっくり育つのだ。 ビーチコーミングしていると、流木として波に洗われた破片が落ちている。 それを綺麗に磨いて、ペンダントトップにしていたな。 もしミズガンピの繁茂する岩礁をビーチサンダルで踏み込んだり、ふと手をついたら、 皮膚は剥け、血が滲むだろう。 ![]() Rolleiflex 3.5F Xenotar 硬い岩に食い込んで離れない。 小枝でさえも硬く針金のように撓る、まさに岩の鎖帷子。 ■
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by jazz_houser
| 2009-03-31 23:30
| 新城島
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2009年 02月 04日
新城島の海岸は自然そのものである。 たまにシュノーケルツアーで来た観光客を見たりするが、 どこまでも続く砂浜に、私ひとり。 灼熱の白の世界を彷徨うと、現実感が消失する。 ふと飛び込むそれ以外の色に目が覚める。 カラフルな魚網を絡めるのは波。 砂に装飾を施すのはヤドカリ。 ![]() Wide Angle Rolleiflex 自然のいたずら ■
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by jazz_houser
| 2009-02-04 17:17
| 新城島
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2009年 01月 27日
思えば、初めての新城島は波瀾万丈だった。 石垣→西表・大原経由→新城島というルートで上陸した。 定期航路ではないが、島民が安栄観光に連絡すると、 便は選べないが乗せてくれる。 普通一人よりも数人集まった方がよい、けれど私は一人。 帰りはすんなり石垣直行、のはずだった。 おばぁに別れを告げ、ちょっとしんみりしながらおじぃと桟橋に向かう。 サソリやらカメラの故障も、今となってはよい旅のエッセンスかもしれないな・・・ 昨晩は二人飲み過ぎて、「東京に電話しろ、歌を聴かせる!受話器こっち向けろ」 なんて大騒ぎしてたらおばぁに怒られた。 夜中に本気で唄うんだもの。 今夜は久しぶりにビールを飲んで、 石垣で味の濃いものを食べようかと思っていた。 木陰でおじぃと船を待つ。 おじぃもこの濃密な四日間で撮られ慣れてきたらしい。 「あれだ、大原から船が出た」 対岸の港から白波を立てて向かってくる。 ![]() Wide Angle Rolleiflex 「あのブイのあたりで曲るさ。」 船影がどんどん大きくなる。 新城島の近海を右に滑ってゆく。 ・・・ 曲らない。 「行っちゃったよ・・・」 前日に連絡してもらっていたのに、見事に見捨てられた。 さてどうしたものか、、、今日は郵便船も来ない。 おじぃはもう一泊してけと言うが、明日は一便で波照間に行かなければならない。 石垣や黒島からいくつかの業者がシュノーケルツアーを行っている。 頼み込んで、黒島まで片道載せてもらうことになった。 「シュノーケルツアーだから、泳ぐのに付き合ってもらうぞ、道具はないけど」 まぁ、こういうアクシデントもいい。 蒸した狭い船内で、海パンに着替える。 体一つ碧い碧い海に飛び込む。 ほぼ生まれたままの形で、海に抱かれる。 黒島沖のサンゴ礁は言葉では言い表せない。 細胞が生き返る海。 新城島はちょっと気合を入れないと行けない島だ。 その後は船に忘れられてはいない。 行ったすぐ後は濃密すぎておなかいっぱい、と思うのだけど、 しばらくするとまた二人に会いたくなる。 もう半年会っていない。 また顔見に行こう。 ■
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by jazz_houser
| 2009-01-27 12:40
| 新城島
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