2009年 09月 07日
木の中には、何か超自然的なものを感じさせるものがある。 沖縄だと、キムジナーが棲むガジュマルもそうだ。 鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』では「木魅(こだま)」と題し、 木々のそばに老いた男女が立つ姿で描かれており、百年を経た木には神霊がこもり、 姿形を現すとされている。(Wikipediaより) 人は太古から木を崇拝してきた。 私が初めてこの木と接したのは2007年11月23日。 大袈裟かもしれないが、そのとき単なる木材という範疇を超えた、何かただならぬ気配を感じた。 不思議な縁から繋がった丸太。 金属のように重く、ねじれて、堅い。 送るために切断した断面は肉体のように赤い。 成長が遅いため、肉眼では年輪が見えないのだ。 ![]() 何を思ったか、三線にすることが摂理のような気がした。 2007年12月から製作に着手していただいた。 通常伝統的な三線は樹齢100年、直径30cm以上の大きな黒檀の丸太を、 十字に4つ割りして作られるという。 こんな曲がりくねった、細い木で作るのは至難。 完璧な材ではなく、製作者に申し訳なさもあり、 でも私にはひたすら完成を願うことしかできなかった。 幾多の紆余曲折を経て、2009年9月4日ついに完成した。 ![]() 出来上がった棹は木目が流れる水のように大変美しい。 流れ、渦に溜まり、また滲みだす。 ![]() 細さがより密度を高くする。 私は素人だけれど、つま弾くだけで、犬も驚くほど強い鳴り。 そしてどこか切ない響き。 ![]() 想像してしまう。 台風に撓り、潮を被り、太陽光線に晒される。 人には分からない速度でじわじわと成長した。 その下で何代も繰り返される人の営みを静かに見つめてきたのだろう。 ![]() 肉体的な成長が終わった今は、三線として私の傍で鳴る。 窓から風に乗って、島まで届くかもしれない。 あの丸太をここまでの三線にできたのは、 私の勝手な想いを酌んでいただき、 製作者 内間直樹さんと、仲村オーナーの尽力があってです。 本当にすばらしい出会いに感謝。 奏愛工房 沖縄三線のお店 大事に毎日触れて島を感じたいと思います。 ■
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by jazz_houser
| 2009-09-07 12:00
| ありがとう
|
Comments(20)
![]()
おお!ついに完成しましたね!
以前からお話には聞いていましたが美しい! 是非ナマで音を聴いてみたいものです。 職人さんに自分のために時間をかけて一品ものを仕上げて いただくというのは本当に贅沢で素晴らしいことだと思います。 「木」に「神」の姿を見るというのは多少なりとも世界的に共通する 文化だと思いますが、木にしめ縄まで巻いてしまうのは日本人 くらいではないでしょうか。「御神木」などと言って木を崇めるのも。 何かの本で、病気になったら樹齢何百年という大木に抱きついて 木のエネルギーをもらい病気を治す人がいるというようなことを 読んだことがありますが、私はそういう話を聞いてもまったく 驚きません。当たり前のことだろうな、と思います。 その木は私たちの生まれるはるか以前からそこに存在し、 私たちが死んだあともたぶんそこに存在します。 木のほうが人間などよりもよほど知恵があるのは当然のような 気がします。 この三線も、職人さんと「木」そのものの持つ力が宿って さぞかし美しく力強い音色を響かせることでしょうね!
轟さん、できました!!!
ワンオフ、オーダーメードというものは私は初めてでしたが、 轟さんの楽しさが少し体験できたと思います。 今は嬉しくて、一音づつ鳴らしてみたり、フキフキしています。 なぜかうちの犬が大好きなようで、尻尾を振ってキュンキュン興奮しています(^^; 私の好きな場所には木が生えているのですが、 おそらく何百年も前から同じ場所で、人と島と海を眺めて、 ジワリジワリと根と幹を伸ばしてきたのでしょう。 もしかしたら、オヤケアカハチも眼にしていたのかな、なんて思うと、 壮大すぎて、人の一生という尺度では計れないものを感じます。 多分この三線も私の一生よりも長く鳴り続けるのでしょう。 まずは一曲、よんなーよんなー弾けるようになりたいと思います。
すばらしいです。
そして、うらやましいです。 僕は幼い頃からずっとギターを弾いています。 ギターと三線はもちろん違う楽器ですが、 これはとてもしっかりとつくられたものと感じます。 もともと木に宿っている魂が制作者の魂に触れ 心地よく喜んでいるように見えます。 工芸品のように飾っておくより 今度は矢口さんの魂と触れ合うこと。 些細な弾き傷や打痕など気にせず、 じゃんじゃん弾いてあげてほしいなと思います。 そのほうがこの三線も喜ぶでしょう^^ 10年後、20年後には名器へと 育っているかもしれませんね。
nicoglassさん、ありがとうございます。
ギターと聞いて、初めてお会いした時に受けた印象とぴったり重なりました。 そう言っていただけると、嬉しいです。 ちなみに奏愛工房のオーナーはギターが大好きのようですよ。 まだちんだみ(調絃)も怪しいのですが、昨日もやってしまいました。 多分左手の爪はいつも短くしておかないとかな、なんて想像してみたり。。。 三線のお手入れはよく弾くことらしいので、 離れていても、繋がってる、勝手にそう思っていて、嬉しいです♪
とても美しいですね。
楽器として従順なのか、はねっ返りなのか存じませんが(失礼!)、 こんな楽器を鳴らすことが出来れば、とても幸せだろうなぁ。。
iwayanさん、はじめまして。
私には本当にもったいないくらいの棹です。 楽器については全くの素人ですが、どうなんでしょう。 いつか島の唄者に聞いてみようと思います。 今はテーーーンン・・・と余韻を楽しんでいます。 iwayanさんは器がお好きなんですね、 私も最近好きになりまして、ちょっとづつ気に入ったものを 集めて使っています。 またよろしくお願いします。
こんばんわ
素晴らしい三線ですね。どんな音か聞いてみたいです。 元の木がしっかりしてそうですので、音も狂いにくそうです。
jazz_houserさん、こんばんは。
とても良い音色がしそうな三線ですね。 テーーーンン・・・の響きだけで癒されそうです^^
shin2627さん、おはようございます。
この木は元々枯れていますが、多分密度が高い分、 中に溜まった水分が抜けて乾燥するまで十分な時間が必要なんじゃないかと思います。 製作まで2年弱かかったのも、木の動きをみつつだかららしいです。 木は枯れても生きているようですね。
kadokawa511さん、ありがとうございます。
昨夜ちんだみをしながら、うっとりとしておりました(^^; 犬は相変わらず飛びついて興奮しておりましたが・・・ ![]()
三線と書いてサンシンと読むんですよね?確か。
まさに、木に宿っていた精霊の波動、が聞こえるんでしょうね。 波音が似合いますね。 来週、楽しみにしています。
いいねぇ、美しいねぇ。
艶っぽくて、色っぽい三線だねぇ~。 弾かせて。
gaozhongjpさん、絃を弾くと、棹が震えるのを掌で感じます。
いいですねぇ。。。 来週、よろしくお願いします。
harutibe、長く待ってやっとできたからね。
想いも一入です。 木の素の色が暗い赤茶。 この写真では明るく写ってるかも。 今度ナー(^^) ![]()
矢口さん、こんばんは。
上等ぐわぁな三線ですね。 三線とはある意味、めぐりあわせだと思っています。 縁あって出会った木でできた三線。 そんな縁のある三線を弾いて歌って、それが更に 色んな人との縁に繋がればいいですね。 八重山に年何回も行ってらっしゃるのであれば、 八重山の研究所に入ってはいかがでしょうか? 歌を通じて知る歴史的背景や人々の大切にしてきている 風景や想いを知ると、八重山がまた違った視点で見ることが できます。奥深いです。きっと写真を撮る上でも良い影響が あると思います。 なんて偉そうなことを言っていますがかくいう私も 実は三線を習っていて、数年続いているのは 三線とお酒がセットになっているからです(笑) アフターもばっちりです。
NoriPさんこんばんは。
研究所に通ってらっしゃるのですね! すばらしい! 私は歌はそれほど存じておりませんが、 労働の中で生まれたジラバやユンタ、 祭の時に聴く古謡など、何を言っているのか、 ニュアンスや大筋を想像するくらいで。 八重山は歌の島。その歌を知るのは相当に奥深いですね。 ご想像の通り私は自由時間?は朝から晩まで写真をやって、 酒を飲んで寝る、そんな生活をしているため、 なかなか規則的に通うのは難しいなぁと思っていたところです。 自分のゆっくりに合う、教室のようなのが見つかるといいなぁと思っています。 杉並にも八重山古典の研究所はあるようですね。 ![]()
そうですね、私にも写真家の知り合いがいるのでわかります。
その人も一日中・年中暇なく写真に身も心も捧げています。 それだけ夢中になれるものがあるとうのは、素晴らしいことですね。 しかもそれにより人々が幸せになれるわけですから、更に。 三線はなるべく触ってあげてくださいね! 弾いていくにつれて、音が馴染んでどんどん柔らかくて 深みのある音になりますから。 生きているみたいで不思議です。
NoriPさん、その方はストイックな方ですね。
でも本人にしてみれば、好きなことを気が済むまでやっているだけなのかもしれません。 私の写真で何らかの感動を受けていただけたら嬉しいのですが、 器用にいくつかこなせる性格じゃないところもあり(^^; 馴染んできた気がしましたら、またお知らせしたいと思います。 ホントいつか八重山に連れて行きたいです♪ ![]()
内間 直樹です。この三線は奏愛工房さんをとおして、制作させて頂いたものです。
インターネットをとおして、取り上げてくださったことを感謝したします。 ありがとうございました。 ![]()
矢口様へ沖縄三線は黒檀が最上とされています。しかし黒檀の次に良いとされている材料はユシ木といわれる方もおらますが浜紫檀と言われてる方もおられます。矢口様が制作依頼された浜紫檀っです。ユシは成長がはやいですが。浜紫檀は三味線が作れるようになるまでに千年かかると言われています。オヤケアカ八チももしかしたら見たのかもしれません。かなり高価な材料と言えるでしょう。最初からいい音は出ませんが10年ー20年と引かれていくうちに棹からの良い音が出てきます。とても良い棹に適した材料と思います。毎日引かれて良い楽器として成長させて下さい。
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